多くの企業の基幹システムを長年にわたり支えてきたIBM i(AS/400)は、業務データの宝庫です。
この豊富なデータを営業活動や経営戦略に役立てるために、各企業様ではBIシステムの導入やモバイル端末の配布など、さまざまな方法で「IBM iのデータ活用」を行っているかと思います。
本コラムでは「IBM i のデータ活用」のパターンを分類して考察することにより、実際によく行われているデータ活用方法のメリット・デメリットを明確化します。
そして、この分析を踏まえて、IBM i のモダナイゼーションツールを利用したIBM iのデータ活用方法についてご紹介いたします。
■ データ活用パターンの分類
無数に存在するデータ活用パターンを完璧に分類することは困難ですが、様々な切り口で分析することは、IBM iのデータ活用の目的と手段がマッチしているかどうか確認する上でも大変有益です。
「5W1H」は、いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どのように をまとめたもので、情報整理の方法として知られています。
この観点でデータ活用パターンを分類してみることにします。
5W1H | 分類の切り口 | 例 |
When(いつ) | いつ時点のデータか | 締めデータ(月次、週次、日次等)、リアルタイム、等 |
Where(どこで) | どこのサブシステムのデータか | 販売管理、生産管理、経理システム、等 |
Who(だれが) | 誰が使うデータか | 経営者、営業部門(責任者、担当者)、等 |
What(なにを) | 何のデータか | トランザクションデータ、マスターデータ、等 |
Why(なぜ) | データ活用の目的は何か | 状況・実績の単純な確認、データ分析により戦略立案、等 |
How(どのように) | どうやってデータを使うか | PC画面、タブレット、スマホ、Excelダウンンロード等 |
上記の分類方法は一例にすぎませんが、「IBM iのデータ活用」を何らかの切り口で分類・分析することにより、本当のニーズが明確になります。次に、この切り口を踏まえて、IBM iのよくある2つのデータ活用方法を分析します。
■ IBM i の外部に情報系システムを構築(活用方法:その1)
次のような方法が一般的に行われています。
● 情報系の別サーバーを構築し、IBM i基幹システムのデータを複製
● 情報系システムとして市販のBIツールを導入するケースもある
この方法は、以下のようなケースに適しています。
[When] 月末・四半期などの締めデータを元に 、
[Who] 経営者・営業責任者が 、
[Why] データ分析により営業戦略を立案。
[How] 分析はExcelまたはBIシステム等で行う。
外部サーバー形式は優れた方法ですが、メリット・デメリットを挙げると以下のとおりとなります。
● IBM i基幹システムのファイルレイアウトがわからなくても
エンドユーザー自身でデータを集約・加工できる
● IBM i 1台で完結する方法と比べるとトータルコストが高い
● IBM i 基幹システムの業務中のリアルタイムデータがわからない
■ QueryのダウンロードデータからExcel作成(活用方法:その2)
Queryを使うのは昔からある一般的な手法です。
・ユーザー要望に応じて情シス担当者がQueryを作成
・QueryデータをダウンロードしてExcel形式で提供
Queryは以下のようなケースに適しています。
[When] 任意の期間のデータを、
[Who] 営業担当者が、
[Why] 状況確認または簡易的に分析。
[How] 利用はExcelで行う。
Queryは大変便利なツールですが、メリット、デメリットを挙げると以下のとおりとなります。
● 作成が簡単で迅速に提供できる
● ユーザーが使い慣れたExcelでデータを提供
● 作成は情報システム部門が行う必要がある
● 作成済プログラムの管理が困難(フォルダで階層的に仕分けできない)
エンドユーザー部門ではなく情報システム部門でQuery作成が必要な理由
● エンドユーザーはDBの構造や決め事(例:取消レコード、等)を理解していない
● ファイルアクセス権の制御が困難でセキュリティの問題がある
■ IBM i ローコード開発ツールValenceによるデータ活用
Valenceは簡単な設定だけでIBM iのプログラムを開発できるローコード開発ツールで、5250画面を最新のUIに刷新するモダナイゼーションツールですが、IBM i のデータ活用にも適しています。
Valenceによる「データ活用」は、以下の方法で行います。
● 表形式(グリッド)の照会画面からデータをExcel形式でダウンロード
● グリッド、多彩なグラフなどのUIによりPC、スマートデバイス上でデータを参照
上述の各方式のメリット、デメリットを踏まえ、Valenceによるデータ活用との比較は、次のとおりです。
エンドユーザーによるカスタマイズを実現するValenceの機能
一般的なユーザーカスタマイズの問題点 | Valenceによる解決 | |
ユーザーはIBM iのDB構造を理解していない | ⇒ | データ抽出は情報システム部門が行い、 結果を型(データソース)として保存 |
セキュリティ上、ファイルアクセス制限が必要 | ⇒ | UI(ユーザーインターフェース)作成以降を エンドユーザーが実施 |
Valenceなら、データ抽出(データソース作成)とUI設計(ウィジェットの作成)以降が別ステップとして分離され、エンドユーザーに対するデータソース作成のアクセス権を制限できます。
ウィジェット作成画面と完成したアプリ画面の例は以下を参照ください。
Valenceの製品概要や機能概要は、製品ホームページ(リンク)をご覧ください。
■ まとめ
本コラムでは、「IBM i のデータ活用」をいろいろな切り口から検討することの重要性、代表的な2つのデータ活用方法(外部システム、Query)のメリット、デメリット、ローコード開発ツールValenceによるデータ活用方法と他の手法との比較、について述べてきました。
「データ活用とは何か」を深く検討することにより、データ活用に求める業務ニーズが明確になり、費用対効果を含めた自社に最適な手法が決定できます。本コラムでご紹介している分析や手法は一例ですが、IBM i基幹システムのデータ活用の検討のきっかけになれば幸いです。
そして、ローコード開発ツール「Valence」を利用した手法も有力な選択肢として本コラムでご紹介しました。
Valenceは、Queryと遜色のないスピードでIBM i のデータ抽出ができExcelでデータ分析ができることに加え、グラフ表示やモバイルデバイス利用など、照会画面でのデータ活用にも最適です。
Valenceのオンラインセミナーも定期的に開催していますので、ご興味をもたれた方はぜひご参加をご検討ください。